ここでは『戯曲』とは何かを、ちょっとくわしく説明いたします。
戯曲とは、舞台上で観客を前にして、俳優が演じる劇的内容(→物語の展開)を、登場人物の対話・独白(→台詞)を主とし、演出・演技・舞台の指定(→ト書き)を補助的に加えて、記したものをいう。
演劇という手法で物語が立ち上がるための、最初の基本的構成要素が”戯曲”である。
戯曲
芸術
一般に戯曲は、脚本、台本とほぼ同じ意味で使われるが、戯曲は、作者(→劇作家)の思想性を重視し、文学作品としても鑑賞できるような芸術性をもった作品をさしていう場合が多い。
それに対して、直接上演を目ざした舞台に直結した作品を脚本・台本という場合が多い。
もともと戯曲という語は、中国で宋・元の時代から用いられ、もとは雑劇や雑戯(歌が中心で庶民に好まれた大衆的な芸能)の歌曲を意味していた。ちなみに日本の歌舞伎(かぶき)では台帳、正本(しょうほん)と呼ばれていた。
明治初年、ヨーロッパのドラマ(drama)の訳語として”戯曲”の文字があてられ、明治末以降、演劇の劇作品を、戯曲と呼ぶようになった。
ドラマは、ギリシア語の「行う・行為する」を意味するドラン(dran)を語源にもつ。
「俳優が観客に自分の肉体で、あるできごとを演じてみせること、または、その演じる人物の行為(できごとの事柄、筋の展開)」を、戯曲は描くのである。
歴史
ト書き
『ト書き』とは…
戯曲の中で、台詞(せりふ)以外を書いた部分。
登場人物の出入り、動き、心理、状況、風景、また、照明、音楽、効果などの演出的要素の指定などが書かれる。
これは必ず全部を書かれというわけではない、劇作家の趣向で決まる。
歌舞伎(かぶき)脚本で「ト思入(おもいい)れあって」というように、かならず頭にトと書いたのが名称の始まり。
なお、竹本では、
と立出(たちい)ずれば、のように単純な動きだけを表現したものを「ト書浄瑠璃(じょうるり)」とよぶ。
近代劇では、舞台装置や場面の状況を指定した部分を「舞台書」とよぶことがある。